熱傷は、世界的に重大な公衆衛生上の課題であり、世界保健機関(WHO)の推計によれば、年間約1,100万件の症例が報告されており、約18万人が熱傷が原因で死亡していると報告されています。これらの症例の約半数はアジア地域で発生しており、特に中国やインドなどの国々に集中しています。1。
熱傷の適切な管理は、感染、治癒遅延、肥厚性瘢痕形成などの合併症を予防する上で極めて重要です。熱傷管理において重要な要素のひとつが、適切な熱傷用ドレッシングの選択です。理想的な熱傷用ドレッシングは、創傷治癒プロセスを最適化し、良好な臨床転帰および患者のQOL向上を支援するための特性を備えている必要があります。2.
理想的な熱傷用ドレッシングの特性
「アジア太平洋地域における熱傷の評価と治療:コンセンサス会議報告書1」、Nischwitz et al.の「global burn care and ideal burn dressing survey2」、および「International Society for Burns Injuries (ISBI) Practice Guidelines3」を通じて、理想的な熱傷用ドレッシングの構成要素に関する共通理解を形成する上で重要な特性が複数明らかにされています。
創傷床への非固着性
創傷床に固着するドレッシングは、除去時に組織損傷を引き起こし、疼痛や新生組織の破壊につながる可能性があります。これに対し、シリコーンベースの高機能非固着性ドレッシングは、治癒過程にある組織を除去時の組織損傷から保護し、除去時の疼痛を軽減するよう設計されています。これにより、ドレッシング交換時の患者負担を軽減し、創傷治癒の促進と良好な臨床転帰が期待されます。
疼痛軽減
疼痛管理は熱傷治療における重要な要素であり、ドレッシングは患者に不快感を与えることなく容易に貼付・除去できることが望まれます。さらに、ドレッシング交換の頻度を最小限に抑え、創傷床に固着しない非固着性ドレッシングを使用することで、除去時の疼痛を軽減し、患者の快適性とQOLの向上に寄与します。
ドレッシング交換頻度の低減
ドレッシング交換の頻度を減らすことで、患者は疼痛や不快感の軽減が期待できるだけでなく、医療従事者および医療システムにとっても、長時間の貼付が可能なドレッシングは業務効率の向上に寄与します。これにより、医療従事者は貴重な時間を他のケアに充てることが可能となります。また、交換回数の少ないドレッシングを選ぶことは、創傷治癒の妨げを最小限に抑え、治癒促進および良好な臨床転帰に貢献します。
高吸収性/滲出液管理
熱傷創は滲出液の量が症例ごとに異なります。理想的なドレッシングは、過剰な滲出液を効果的に吸収しつつ、創傷部に適度な湿潤環境を維持することで、最適な治癒を促進する機能を備えている必要があります。このバランスにより、周囲皮膚の浸軟を防ぎ、ドレッシング交換の頻度を減らすことで、創傷への刺激を最小限に抑えられます。
抗菌性/感染バリア機能
熱傷創は感染のリスクが非常に高く、適切な感染対策が不可欠です。理想的なドレッシングは、微生物の侵入を防ぐ物理的バリア機能を備えている必要があります。さらに、銀などの抗菌成分を含有した高機能ドレッシングは、創部の感染リスクを一層低減する効果が期待されます。
熱傷用ドレッシングの適切な選択による創傷治癒の最適化
熱傷創の適切なドレッシング選択は、効果的な熱傷管理における重要な要素です。理想的なドレッシングは、創傷治癒の最適化、合併症の予防、ならびに患者の快適性向上に寄与する特性を備えている必要があります。 ドレッシングの選択は、熱傷の深達度や範囲、患者の全身状態、ならびに医療資源の状況など、症例ごとの特性に応じて異なります。医療従事者は各症例を適切に評価し、熱傷治療の原則に則った最適なドレッシングを選定することで、患者にとって最良の治療転帰を目指すことが求められます。
